sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
電話越しでわざわざそう呟いたのを最後に、綾辻さんはスマホをポケットにしまってこちらに歩み寄ってくる。
どんな顔をしたらいいのかわからなくて俯く私に、綾辻さんが優しく尋ねてきた。
「千那、さっき嫉妬してた?」
……嫉妬。してたんだろうな。綾辻さんがほかの女の人と話しているのがつまらなくて、目につくほかのカップルが羨ましくて、心がギスギスするあの感じはきっと。
「……少しだけ」
「マジ? あー、ちょっと待って。やばいな、思った以上に嬉しい」
珍しく照れた様子で私から目を逸らす綾辻さん。
っていうか『マジ?』とかいう言葉遣いもなんだか意外だし、どうしちゃったのかな。
「嫉妬されてうれしいんですか?」
「そりゃそうだよ。千那の俺への気持ちが成長している証拠だし」
そういうものなのか……。私はてっきり幼い印象を持たれて幻滅されてしまうかと思っていたけど、違うんだ。
恋愛についての新発見にひとり納得していると、ふわりと手を握られた感触があって。
「さて。気を取り直してデート再開。軽く何か食べて、そしたら一階の水族館行かない?」
「……ん。行きます」
コクンと頷いてそっと握り返した手は、私の手を撫でるように移動して指を深く絡ませてきた。
こ、これはさっき見た恋人つなぎ……! 実際するとこんなにドキドキするものなのか。
ただ握るだけならまだしも、綾辻さんてばときどき親指を動かして私の手をさすってくるし、手の方にばっかり意識が集中しちゃう。
ちらりと窺った彼の横顔は、内心アワアワしている私とは裏腹に涼し気で悔しくなった。