sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
夜の地下駐車場はイメージしていたより蛍光灯の明かりが強く、緊張感が緩んだ。
確かに人気(ひとけ)はないけど、こんなに明るかったら何もできないよね、と安心感を抱く半面、ちょっとがっかりしたのも否めない。
やっぱり私は期待してたんだと思う。何かしらの、甘い展開を。……なんだか自分が恥ずかしい。
そんな複雑な気分で綾辻さんが車を止めた場所まで歩いていき……ちょうどその一角が視界に入った時、再び緊張感がマックスになった。
その理由は、天井にならぶ蛍光灯のうち、なぜか綾辻さんの車周辺のものだけが切れていたからだ。
な、なんでこの広い駐車場のなかであそこだけ暗いの!?
「お。あまりに明るかったら自重しようと思ったけど、これならアリだな」
綾辻さんは楽し気にそんなことを呟くけれど、何がアリなのかと聞くわけにもいかないし、私はただ心臓が口から飛び出さないようにぎゅっと唇を噛むしかできない。
「千那。後ろ乗って」
車のそばまで来ると、完全に動揺している私とは対照的に、家に迎えに来てくれた時と同じく紳士的な動作でドアを開けてくれる綾辻さん。
私は言われるがままにそこに乗り込むと、お行儀よく膝をそろえて座った。
続いて隣に乗り込んできた彼が、ガチガチの私を見てふ、と鼻を鳴らして笑った。
「……そんな緊張しなくても。まあでも、意識してくれてる証拠って思っておこうかな」
余裕たっぷりの笑みでそう言った彼だけど、その表情はすぐに真剣なものに変わり、熱をはらんだ瞳で問いかけてきた。
「キス、していい? ずっと我慢してたんだ」