sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「その顔……やばい。今すぐ千那の全部を奪いたくなる」
唇が離れた一瞬の、必死に欲情を堪えたような、切なげな表情の綾辻さんに流されてしまいそうになる。でも。
「だ、ダメ……っ」
ここは駐車場! いつ人が来て覗かれるかもわからないし、他の利用者の迷惑にだってなるだろうし……!
急に理性を取り戻した私に苦笑して、綾辻さんは私の頭にポンと手を置いた。
「わかってるよ。俺も、千那のことはベッドの上で大切に抱きたいから」
――トクン、と胸にあたたかいものが流れ込む。
なにそれ……そんな甘い言葉、反則だよ。
うれしいのに、心臓、苦しくて……もしかして、これが人を好きになるってことなの?
さっき綾辻さんは“キスで教えて”と言ったけど、自分でも理解しきれていないこの複雑な気持ちが、彼にはどんな風に伝わったんだろう。
「綾辻さん……その。さっきのキスで、なにかわかりましたか?」
私は遠慮がちに、おずおず尋ねる。
「あれ? もしかしてまだ自覚してないのか?」
「自覚、って……?」
「……そっか。千那はかなりの恋愛初心者だから、ちゃんと導いてやらないとダメなんだな。わかった」
ひとりで勝手に納得した様子の綾辻さんは、膝の上にある私の手を軽く握って、こんなことを聞く。
「千那は、こうして俺が触れるとドキドキするんだよな?」