sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜


“私は、あなたが好き”――言葉は簡単なはずなのに、なかなか口から出てこない。

好きだと告げたら、この想いがもっと膨らんでしまいそうな気がして、怖い。

今は幸せでも、その幸せは永遠じゃないって、どうしても思わずにいられない。

そんな思考になってしまうのはきっと……大好きな両親を一気に失ったときのような悲しみを、二度と味わいたくないからだ。


「……千那?」


黙り込む私を、綾辻さんが心配そうにのぞき込む。


「ごめんなさい、私……」


どうして自分に恋愛ができないのか、たった今わかった気がした。

両親をなくしたのはずいぶん昔のことなのに、そのつらい経験は、今でもずっと心に影を落としていたのだ。

……だから、私は怖いんだ。家族のように、ううん、家族以上に愛しく想う相手ができることが。

それならやっぱり、綾辻さんの待っている言葉を伝えることはできないよ――。

そう思うと、胸がぎゅっと潰れそうな痛みを覚えて、私は俯く。


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