sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「千那。顔上げて?」
いつまでも煮え切らない私に愛想をつかしてもおかしくないのに、綾辻さんの声はどこまでも穏やかだ。
「まだ、言えないならそれでもいい。千那が言いたくなるまで、ちゃんと待つから」
彼の優しさが、胸に沁みる。だけど、優しくされると余計につらいよ。
「でも……そんな日が来る保証はないし、綾辻さんの大事な時間、無駄にしちゃう。そもそも、綾辻さんには私なんかよりずっとお似合いの女性が絶対にいます。だから、もう――」
“私に構わないで”そう発しようとした口は、私を抱きしめた彼の胸に押し付けられて声が出せなかった。
「……何と言われようと、俺は千那がいいから。この先も、離す気なんかない」
強引な台詞とともに、腕の力を強めた綾辻さん。
痛いくらいに拘束された腕の中で感じる彼の心音は私以上に、速くて、大きくて。
そこから伝わる彼の強い気持ちに、涙が出そうになった。
いつか、きちんと自分の気持ちを伝えられる日が来る。
綾辻さんが相手なら、その日を待ってみようって思える。