sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜


「ありがとうございます……詠吾さん」


まだ好きだとは言えないけれど、私の心を少しでも表したくて、初めて彼を名前で呼んでみた。

その瞬間、私のことをガバッと自分の身体から引きはがした彼は、目を細めて聞き返してきた。


「千那……今、なんて?」


照れるから、サラッと聞き流してくれればいいのに……と思いつつ、私ははにかんでもう一度だけ口にする。


「……ダメですか? 詠吾さんって呼んだら」

「ダメなわけない。うれしい。うれしいからもう一回抱きしめる」


しみじみと言った彼に再び抱き寄せられ、私は彼の腕の中で目を閉じた。

こんなにも惜しみなく愛情を注がれて嬉しい反面、詠吾さんはいったい私のどんなところを気に入ってくれているのかがイマイチわからない。

恋は理屈じゃないなんてよく言うけれど、それに似たものなのかな……?

そんな疑問が湧いたけれど、彼の温かいぬくもりに包まれているからか、不思議と不安ではなかった。

でも、いつか私が気持ちを伝えることができたときには、直接本人に聞いてみたいな。

そんな未来を思うとワクワクして、その“いつか”は案外近いんじゃないかって思えるほどに、私の頭の中は詠吾さんでいっぱいで、心は浮足立っていた。


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