sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「そんなに警戒しないでください、ただの事実確認ですよ。今さら社長に何か言おうとは思っていません」
……本当、なのかな。副社長の物腰の柔らかさが逆に疑わしい。
彼は口をつぐんだままの私にため息をくと、気だるそうにソファの背にもたれて苦笑した。
「綾辻弁護士を顧問にしたくない。そう思っていたのは確かに私です。でも、その理由は別に大したものじゃないんです」
なんだろう、理由って。すごく気になるけど、いい加減この香りのせいで頭がくらくらしてきたんですけど。
鼻をつまみたいのをこらえながら、私は副社長の言葉を待つ。
「実は彼とは昔からの幼なじみでして。お互いを知りすぎているがために、仕事相手としてはやりにくいんじゃないかと危惧しただけで」
「えっ。……詠……綾辻先生と副社長は幼なじみなんですか!」
それは知らなかったな。お互いを知りすぎているってことは、わりと仲が良いのだろうか。
いやでも、仲が良いならあんな罠を掛けようとはしないよね。顧問の件は話し合いでいくらでも解決できただろうし。
ってことは、幼なじみだけど、険悪な仲……ってこと?
そこまで思い至った瞬間、くらりとめまいに襲われた私はソファに倒れ込んでしまった。
なにこれ。熱があるみたいに、ぼうっとして……体が怠い。
どうにか手をついて上半身を起こすと、副社長がなぜか私の隣に座っている。
勝手に潤んできた瞳で彼を見つめると、薄い唇をひゅっと引きあげて微笑した彼が呟く。
「……お香が効いてきましたね。」