sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜


「そんなに警戒しないでください、ただの事実確認ですよ。今さら社長に何か言おうとは思っていません」


……本当、なのかな。副社長の物腰の柔らかさが逆に疑わしい。

彼は口をつぐんだままの私にため息をくと、気だるそうにソファの背にもたれて苦笑した。


「綾辻弁護士を顧問にしたくない。そう思っていたのは確かに私です。でも、その理由は別に大したものじゃないんです」


なんだろう、理由って。すごく気になるけど、いい加減この香りのせいで頭がくらくらしてきたんですけど。

鼻をつまみたいのをこらえながら、私は副社長の言葉を待つ。


「実は彼とは昔からの幼なじみでして。お互いを知りすぎているがために、仕事相手としてはやりにくいんじゃないかと危惧しただけで」

「えっ。……詠……綾辻先生と副社長は幼なじみなんですか!」


それは知らなかったな。お互いを知りすぎているってことは、わりと仲が良いのだろうか。

いやでも、仲が良いならあんな罠を掛けようとはしないよね。顧問の件は話し合いでいくらでも解決できただろうし。

ってことは、幼なじみだけど、険悪な仲……ってこと?

そこまで思い至った瞬間、くらりとめまいに襲われた私はソファに倒れ込んでしまった。

なにこれ。熱があるみたいに、ぼうっとして……体が怠い。

どうにか手をついて上半身を起こすと、副社長がなぜか私の隣に座っている。

勝手に潤んできた瞳で彼を見つめると、薄い唇をひゅっと引きあげて微笑した彼が呟く。


「……お香が効いてきましたね。」


< 88 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop