sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
動き出した箱の中で、急に目を細めた彼がくい、と私の顎をつかむ。
「さっきからものすごい色っぽい顔してる。……俺を狂わせたいの?」
妖艶なささやきに耳をくすぐられ、心臓がはちきれんばかりに暴れる。
指先から伝わるキスの予感は、私の頬を熱くして、瞳に涙の膜を張った。
こんな反応をしてしまうのは副社長室のお香の効果もあるのかもしれないけれど、たぶんそれだけじゃない。
だって、今の私は、詠吾さんにならキスをされても構わない……なんて受け身の心境ですらなく。
詠吾さんとなら、何度だってキスしたい。そんな思いがあふれそうなほどいっぱいで。
私、やっぱり詠吾さんのことが……。
自分で自分の気持ちを確かめるように彼の瞳を見つめると、胸は火傷を負ったように熱くなり、痛みを覚えるほどだった。
そんな私に、詠吾さんは余裕をなくしたかすれ声で告げる。
「……こんなところで、あまり煽るな。キスで終わる自信なくなる」
彼は私の手首をつかんでエレベーターの壁に押し付けると、すぐさま唇を重ねてきた。
「ん、……っ」
啄むように、優しく。かと思えば、深く舌を絡ませて、リップ音を響かせたり。
蕩けるようなキスを繰り返していると、宙に浮くエレベーターの中にいるせいか、足元がふわふわとして、夢の中にいるみたい。
その心地よさに酔いしれながら、私はふとまぶたを開いて扉の上の階数表示を見る。
すると、思いのほか速いペースで一階に近づいていて、なんだか名残惜しくなる。
「も、着いちゃい、ます……」
「……だな。くそ。こんなんで足りるわけないのに」
お互い熱い吐息をこぼしながら、切なさの滲んだ視線を絡ませる。
そうしてまた引き合うように唇を合わせたけれど、ものの数秒で無情にもエレベーターは一階に到着した。