sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「さ、着いた。行こう」
マンションに隣接した広い平面駐車場に着くと、車を降りて差し出された詠吾さんの手を握る。
……だとしても今はこうして私といてくれるんだから、気にしても仕方ない。
顔を出し始めた不安を騙して、私は詠吾さんに手を引かれるまま彼の部屋へ向かった。
詠吾さんの部屋は南西向きの角部屋で、広いリビングダイニングからの眺望は抜群だった。
ブラックとブラウンを基調とした落ち着いた雰囲気のインテリアも素敵だし、やっぱりこの人はどこまでもイケメンだなと感心する。
そんな部屋のちょうど中央、リビングとダイニングを隔てる部分に大きな水槽が置いてあって、いっそう大人っぽい部屋を演出している。
そういえば、東京タワーの水族館に行ったときに、家で魚を飼っていると言っていたっけ。
「これ、世話とかお手入れが大変なんじゃないですか?」
水槽の前に歩み寄り、ガラスの中を泳ぐ熱帯魚を眺める。なかには数種類の魚が飼育されているけど、水草の鮮やかな緑の中を小さな体で泳ぐ、水色と赤のラインが入った小魚が個人的には可愛くて好きだ。
「最初に環境さえ整えてやればそうでもないよ。ちょくちょく掃除すればあまり汚れないし、その大変さ以上にコイツらには癒し効果があるから」
「へえ……でも確かに、いつまで見てても飽きないです」
優雅に泳ぐ魚に見入っていると、ゆっくり近づいてきた詠吾さんが後ろからそっと私を抱きしめる。
そういえば、私はただ魚を見に来たわけじゃなかったんだった……。そんなことを今更思い出し、急激に心拍数が上がった。