sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
「千那。本当に、いいの?」
最後の確認が、耳元でささやかれる。もちろん返事はイエスだけれど、首を縦に振る前に、しっかり言わなくちゃ。自分の気持ちを。
「詠吾さん……私……」
いざ、告白!と気負いすぎたせいなのか、なかなかその先の言葉が継げない。心臓が上の方に上がってきて喉を詰まらせているみたいだ。
気持ちを落ち着けるために深呼吸をして、再び口を開こうとした、そのとき。
――ピンポーン。
突然玄関チャイムの音が鳴り、私と詠吾さんは顔を見合わせた。
「誰だこんな時間に」
怪訝そうにしながらも、一旦私から離れてキッチンのそばにある壁のモニターを確認しに行く詠吾さん。
突如与えられた猶予にふうと息をつき、どんな言葉で彼に気持ちを伝えようかと悩み始める。そんな私の耳に、詠吾さんの驚いたような声が聞こえた。
「……凛?」
どこかで聞き覚えのある名前に、胸がざわ、と音を立てた。
凛さん……って、確か、詠吾さんの友達の柚殿さんが口にしていた名前だ。その凛さんが、どうして詠吾さんのマンションに?
『突然ゴメンね。どうしても急ぎで話したいことがあるから、上がってもいい?』
水槽のポンプが動く音以外は静かな部屋だから、モニター越しの凛さんの声はハッキリとよく聞こえた。
上がるって……この部屋に? そんな、突然で図々しくない? 急ぎで話したいことってなんなの?
胸の内に黒い雲が渦巻き始めるけれど、まさか私が部屋にいるこの状態で、彼女を招き入れるなんてことはしないよね、と自分に言い聞かせる。
でも、詠吾さんはそんな私の期待をあっさりと裏切った。