sugar days〜弁護士のカレは愛情過多〜
そんなことばかり考えていると、あきらめに似た気持ちが湧き上がってくる。
詠吾さんのことが好きかもしれないって浮かれていた心が、静かに閉じていくようだった。
仕事の話だと詠吾さん本人が言っているのに、あれこれ不安になる自分がいやだ。
凛さんがたとえ本当に仕事がらみだけの間柄だったとしても、これ以上二人を見ていたくない。傷つきたくない。
……もう誰も失いたくない。
凛さんと詠吾さんはまだ何か話していたけれど、私は二人の声を聞かないようにして荷物をまとめると、詠吾さんのもとへと近づく。
「……私。帰ります」
「え。なんでだよ千那」
詠吾さんが不思議そうなことに、腹が立った。
なんでかなんて、自分で考えてほしい。でもいいんだ。私はもう二度とここへは来ないから……。
唇を噛んで黙り込む私に、凛さんが申し訳なさそうに表情を曇らせる。
「ごめんなさい。帰らなきゃいけないのは私の方。じゃあ詠吾、証拠集めのことだけは、自分で何とかしてね。それじゃ」
凛さんはそれだけ言うと、足早に扉を出て行った。
ほどなく玄関の扉が閉まる音がして、この部屋には再び私と詠吾さんだけになった。
「千那……?」
腫れものを扱うような声で呼ばれ、ゆるく手首を握られる。心は閉じたはずなのに、そうされると後ろ髪を引かれてしまう。
「凛のこと、気に障ったなら謝るよ。ごめん。……もう、今日はそんな気分じゃなくなっちゃった、かな」
ちゃんと謝ってくれたことは嬉しいし、本心では“そんなことないです”って思っている。
むしろ、わざわざ私の意思なんて聞かないで、ベッドに組み敷いて、めちゃくちゃにして。
そうしてくれたら、安心できる気がするのに……。なんて、私、矛盾してるよね。
これ以上詠吾さんに深入りしたくないって思う反面、抱かれたいと思うなんて。