ぼくのセカイ征服
まぁ、考えてばかりいてもしょうがないか。とりあえず、小腹も減ったし、いつものあの店で何か食べながら、これからの事と明日の事を考えるとしよう。

もちろん、無事、助ける事が出来た少女…じゃなかった、少年と、共に。
そういえば、何だかんだで、結局まだ名前を聞けずじまいだったな。
なので。

「改めて聞くけど、君、名前は?」
「はい!僕の名前は瞬牙です!フルネームは、瓜生瞬牙。漢字は、食べ物の瓜に生きる、瞬く牙、と書きます。して、先輩の下の名前は?」

瞬牙、か。ああ、名前はカッコイイのに、女装嗜好があるとは、色々と残念なヤツだ。
それはさておき、恰好や口ぶりから判断するに、やはり、コイツが僕と同じ高校に通っているのは間違いないらしい。他校の生徒が、僕の通う高校の制服を持っている事はないだろうし(女装しているコイツの場合、他校の生徒が僕の通う高校の生徒に制服を借りている可能性もあるため、一概にはそう言い切れないのだが)、何より、コイツは僕の事を『先輩』と呼んでくるのだから。
よくよく考えれば、あの時間帯に、学校近くのあの道を、他の学校に通う学生が徒歩で通る事はほぼ有り得ないんだった。

話が多少逸れるが、僕の通う高校は、男子はボタンの色が、女子は袖のラインの数が、学年によってそれぞれ違う。(瞬牙はそこから僕の学年を判断し、先輩と呼んでいるのだろう)瞬牙の着ているシャツは、袖のラインが三本なので、現在の一年生のものだ。
まぁ、おそらく借り物の女子の制服を着用しているわけだから、僕と同じ高校だとしても、本当に後輩かどうかまでは、正直疑わしいのだが。でも、先輩と呼んでくるからには、同じ高校に通う後輩なのだろう。
しかし…一体、その制服は誰に借りているというのか。
まさか、自分で所有しているのか!?それなら、尚更関わり合いたくねぇ!まぁ、今になっていくら関わりを避けようとしても、結局、手遅れなのだが。
…と、考察ばかりしていても仕方無い。僕は今、名前を聞かれているんだった。出会った最初の頃に苗字は教えたからだろうか、僕に余計な手間を取らせまいと、下の名前だけを聞いてくるとは、律儀なヤツだ。
しかし、念には念を、だ。名前を間違えて覚えられると、結構ヘコむし。
と、いうわけで。
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