ぼくのセカイ征服
…あ、そうだ。見事、部員になる権利を勝ち取ったシュンに、アレを渡さなくては。
僕は、自分の鞄を開き、少し端の折れ曲がった書類をシュンに手渡した。

「これは…?」
「部活動登録手続書。これに、必要事項を記入して、担任の先生に提出すること。わかったか?」
「はい!」

うん、いい返事だ。
あとは…

「さて…と。じゃあ、そろそろ帰るか?」
「そうですねっ!お腹も一杯になりましたしっ!」

ああ、コイツ、やっぱり満腹まで食いやがったのか。いつの間にか、あれだけあったホットドックが見事に平らげられている(注文した時に、冷静に対応してくれたお姉さんや、そのお姉さんに見とれていた僕の描写は、敢えて割愛させていただいた。不要なシーンはカットできる。これが、回想シーンのいいところだ)。
お金は先払いだから、先輩としておごらなければならない、というオチはないのだろうけど…何か、漠然とした不安を感じるのは気のせいだろうか?

…っていうか、いつ食べた!?今の今まで、ずっと僕と話していたはずだぞ!?
もちろん、話しているところはほとんど割愛していない。
…本当に、いつ食べたんだろう?
まぁ、いいか。そんなに気にするような事でもないし。

「じゃあ、帰りがけにお前を家まで送っていくから、案内を頼むとするかな。」
「合点承知ですっ!…あっ!」
「…どうしたんだ?」
「そういえば、まだ先輩からメールを送ってもらっていませんでしたっ!」
「ちっ…」

…本当に、抜目ないヤツだ。コイツからは逃げ切れない運命なのか、僕は。

「ああ!今、舌打ちしませんでしたかっ!?」
「しっ、してないしてない!」
「河童に誓って…?」
「僕はそんな変なモノに誓ったりはしないっ!」
「…ささ、先輩。行くなら行きましょう♪」
「僕のツッコミはスルーかよ…」

僕は何気に、店を出る前に妹の分のホットドックを買い、それから、他愛ない会話をしながらシュンを家まで送り届けた。

そして、やっとの事で我が家に辿り着いた僕は、人間としてやらなければならない事を一通り片付けて、スミレの別れ際の台詞の意味をもう一度考えてから静かに床に就いた。


…今日は、本当に忙しい一日だったが、こんな一日も、たまにはいいのかもしれない。
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