ぼくのセカイ征服

「──先輩っ！先輩先輩先輩先輩先ぱ〜い！」

不意に、黄色い声が廊下から響き渡った。
つまり。
…ヤツが来た。待ち兼ねたぞ。相変わらず、騒々しい事この上ないな。
しかし…
声を聞いた瞬間、あれほど待ち遠しかったのが嘘だったかのように、体中に倦怠感が漲った。生理的に受け付けないとは、まさにこのような事を言うのだろう。
やはり、僕とシュンの生まれながらの相性は最低の様だ。
だが、拒み続けていても仕方無い。慣れるように努力はしよう。

「しぇ…せ、せせせしぇん輩ッ！連れてきましたよっ！」
「軌道修正に失敗したっ！？」

努力はするけど…慣れられそうにないな。これは。
それにしても、教室に入って来た瞬間からツッコミ所を作るとは、やはりシュンは相当の切れ者の様だ。もしくは、天性のボケだな。後者だとしたら、もはや神に近い。偶発的にあれほどの『噛み』が起こるとは考えにくいし。
まぁ、とりあえず、それは一先ず置いといて。

今、シュンの後ろには、明らかに、意図的に息を殺している少女の姿がある。そして、その少女からは、恐怖すら感じるほどの冷たい雰囲気が漂っている。殺気に近い気配も感じるから、その気迫は相当のものだ。
流石に、あのスミレには及ばないが。
それにしても、この少女…まるで、シュンの隙を窺い、隙あらば、暗殺しようとしているかのようだ。

その鋭く…しかし、それゆえに陰鬱な光を放つ双眸が、少女の心に秘められた危うさ…と、不安定な感情を物語っている。
まぁ、これは、僕が知らず知らずの内に少女の事を曲解しているだけなのかもしれないが。
もちろん、この少女がシュンの妹なのだろう。が、何か、とてつもなく…そして、途方もない危機を感じる。はっきり言って、あまり関わりたくない。第一印象は、最悪の一歩手前…といったところか。

「ホラ、ジュンちゃん。挨拶挨拶っ！」
「ん……」

少女はシュンに促されると、頷き、ゆっくりと口を開いた。
そして。

「…私の名前は楯禍。『瓜生 楯禍』（うりゅう じゅんか）です。ふつつか者ですが…何卒、よろしくお願いいたします。」
「よ、よろしく。僕は…」

シュンの妹は、予想に反してコミュニケーション能力が高かったです！驚きましたっ！
なんて、シュン風のモノローグを使ってみたり。