ぼくのセカイ征服
「…はぁ。ホント、マイペースだよな、コトハは。羨ましいよ。」
「そ、そう?単に脳天気なだけだよ!」
「謙遜するなよ…。別に褒めてないから。」
「トオルくん、酷いッ!もう、おヨメに行けない…」
「じゃあ、おヨメに行かずにおムコを取ればいいだろ!」
「あっ!そうだ!トオルくんが責任を取ってくれればいいんだよ!」
「取っても付かぬ態度で拒否してやる!」
「それなら私は、取って置きの口説き文句でトオルくんを虜にしてあげる!」
「取って付けた様な台詞では、僕は靡かないぞ!」
「じゃあ、取り敢えず、手料理でも。」
「そんな事までしてくれても、一切取り合う気はない!」
「いいもん!セガちゃんに頼んで、取り合わせ手をやってもらって、無理矢理トオルくんを取り扱ってトオルくんの主体性を全部取り上げちゃうから!」
「くっ!コトハの方が一枚上手だったか!」

この会話、何だか、取り過ぎだ。色んな意味で。それに、字的にも。

…何やってんだか。

こんな時は、話題を変えよう。そして、いつの間にかタイムリミットがあと1時間と迫っている事を無視して、僕の部活最期の時を、諦め半分にコトハと一緒に過ごすとしよう。理解力の高いコトハなら、いきなり話題を振っても大丈夫だし。
何より、何故か、コトハは一番会話しやすい雰囲気の持ち主だから。

「…正直、ああいう兄妹に…少し憧れてる自分がいるんだけど、コトハはどう思う?」
「トバリちゃんは、歳の割に驚くほど自立してるし、あの妹ちゃん以上にしっかり者だからねぇ。トオルくんと話す時は、やたらと大人しいし。」
「少し、冷たいと感じるくらいにな。」
「でも、トバリちゃんは多分、トオルくんの事を誰よりも大事に思ってくれてると思うよ。それはもう、トオルくん自身よりも、ずっと。それに、トバリちゃんは『家族』でしょ?『家族』にそんなコト言っちゃダメだよ。」
「正直、『家族』って存在がどういうものか…僕はわからないんだ。ほとんど…覚えてないし。」

理不尽に、不条理に、奪われたから。
今の僕には、何もないから。持っているものも、失うものも。

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