ぼくのセカイ征服

『副会長』を納得させた『会長』の勢いは止まらず、駄々をこね続けるヘイトという男のワガママまで一気に押さえ込む事に成功してしまった。
その少し後、半分以上無理矢理に丸め込まれた男は、駄々っ子を彷彿とさせる膨れっ面を携えて、まだ会議を終えていない部屋を何も言わずふらふらと出て行った。

「ちょっと…ヘイトは帰ってしまったけれど、放っておいていいものかしら?」
「ああ。会議はもう終わる。何ら問題は無い。先刻、少し話が出たが、今回の更正は『剣道部』のみだ。その任務は、アヤナに熟してもらう。構わないな?アヤナ。」
「…もちろんだ。」
「よし。以上で、会議を終了する。各自、自分の判断で解散しろ。」

『会長』のこの言葉で、長きにわたる会議はようやく幕引きを迎え、皆は束の間の解放を得る事となった。

「――じゃあね、皆!アタシはバイトがあるからこれにてっ!」
「………皆、またな。」
「私もぉ、さっさと帰るとしましょうかねぇ…では、さようなら。」
「…会長たる者が先に帰るのは不謹慎だが、いかんせん時間がない。俺も帰らせてもらう。悪いが、アミ、戸締まりを頼む。」
「ええ。わかったわ。」

こうして、会議が終了して僅か5分足らずで、部屋には二人の女だけが残されるのみとなった。

「…さて、それでは私達も帰りましょう。」
「………………………」

アミという女が誘った時、アヤナという女は何か、深く考え込んでいる様子だった。その表情は、先程にも増して儚く、そして切ないものとなっていた。

「…アヤナ?どうしたの?そんなに思い詰めた顔をして…」
「――いや、別に…」

そうは言ったものの、女が心に何か不安のようなものを抱えているのは目に見えて明らかだった。

「珍しいわね、貴女がそんなに考え込むなんて…。悩みがあるのなら、私に話してみて。解決策は与えられないかもしれないけれど、『参考になる』程度の事は言えると思うから…」
「…悩み、か。心配させて悪かったな。私は大丈夫だ。悩みなど全くない。」

口では否定しているが、旧知の仲である『会計』の女からしてみれば、やはり、『副会長』の女の態度は隠しきれない何かを隠し通そうとしているような…手が届かないモノに必死で手を伸ばし続けているような、そんな違和感を感じるものだった。
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