ぼくのセカイ征服
――『日常』に潜む『非日常』。何の前触れも、兆候もなく訪れる『瓦解』。そして、音も無くただ崩れていく『日常』。
たやすく『その日』がやってくる者もいれば、一生『その日』を迎えずに生涯を終える者もいる。
『その日』がいつ訪れるかなんて、誰にもわからないのだ。おそらく、この世界を創造した者でさえも。
――しかし、ただ一つだけ、確かな事があった。
それは、この日がアヤナという女にとって、『その日』だったという事。
部屋にただ一人残された女は軽く目を閉じ、昔の事を思い出しているようだった。
他者が決して預かり知らない心の深奥、自分ですら容易に引きずり出す事の出来ない記憶の根底。
女は、いつか来るべき未来…あるいは過去を思索しながら、かじかむ心で…凍り付く声で、ゆっくりと呟く。
「――因果なものだな…トオル……」
誰に聞かせるでもない女の声は、窓から差し込む宵闇の微かな光に照らされ、しばらく揺らめいてから儚く散った。
まるで、陽炎のように――