ぼくのセカイ征服









――『日常』に潜む『非日常』。何の前触れも、兆候もなく訪れる『瓦解』。そして、音も無くただ崩れていく『日常』。
たやすく『その日』がやってくる者もいれば、一生『その日』を迎えずに生涯を終える者もいる。

『その日』がいつ訪れるかなんて、誰にもわからないのだ。おそらく、この世界を創造した者でさえも。

――しかし、ただ一つだけ、確かな事があった。

それは、この日がアヤナという女にとって、『その日』だったという事。





部屋にただ一人残された女は軽く目を閉じ、昔の事を思い出しているようだった。

他者が決して預かり知らない心の深奥、自分ですら容易に引きずり出す事の出来ない記憶の根底。

女は、いつか来るべき未来…あるいは過去を思索しながら、かじかむ心で…凍り付く声で、ゆっくりと呟く。





「――因果なものだな…トオル……」





誰に聞かせるでもない女の声は、窓から差し込む宵闇の微かな光に照らされ、しばらく揺らめいてから儚く散った。

まるで、陽炎のように――
< 71 / 73 >

この作品をシェア

pagetop