餃子
斎藤は、革靴を履いた。

斎藤は、帰ることにしたんだ。

脳内への、帰宅。

空想を主体とする旅立ち。

斎藤は、恋人のいない淋しさにうち震えたが、

家の神様は、シチューをかき回しながら、教えてくれたんだ。

「恋人は、もう、ここには、いるよ」と。

「君の帰りを、いつも待っている」と。

それで、斎藤は、意外にも、賢明だったので、
覚ったんだ。

斎藤は、覚った。

それで、脳内の、神様の家に、立ち返らせて貰うことにしたんだ。

涙が溢れ出そうだった。

斎藤のね、それはね、神様がね、斎藤じゃない、斎藤というか、神様のなんだ、神様の悦び、神様の涙だ。

やっと、帰って来てくれた、慶びの涙だ。

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