呪われ姫と強運の髭騎士
 思い出し、改めて気付いた侍女もハッとして青ざめる。
 
 そうだ。本来なら身分が上で主人である、ソニアの手の甲に口付けをするのが先ではないか。
 
 なのに、彼女には敬う礼をしたが、淑女への労りは無かった。

「忘れていたとか……?」
 
 侍女は王子にされた行為が嬉しくて、主人の前ではしゃいだことに恐縮しながら答える。
 
 対してソニアは、侍女の様子には気に掛けていないようだ。あくまでもセヴランに対しての疑問。

(私に毛布を掛けるときにも、身体に触れないように最大限に気を遣っていた)
 
 それが感じた違和感だ。
 
 侍女にした、挨拶の手の接吻で何がそう感じたのか――分った。
 
 優雅でスムーズな行動に一点だけギクシャクしていたのは、自分に触れないように毛布を持つ自分の手に集中していたからだ。

「王宮にも伝わっているの? 私の城でのこと……」
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