呪われ姫と強運の髭騎士
「失礼します」
 
 扉を叩く音に二人はそっと離れた。

「お入りなさい」
 
 シスターのいつもの穏やかな口調に促され、扉が開かれる。

「失礼します。お話が弾んでいるなか申し訳ない」
 
 そう入ってきたのはクリスだった。
 
 ソニアを修道院に預けた後、彼は教会に戻り教皇の救出に行っていたのだ。

「教皇様は、何ともありませんよ。あの後、足も床から離れてケロリとしておりました」
 
 ソニアの案じていた内容を悟っているように報告する。

「良かった……」
 
 自分があれほど怖かったのだ。教皇だって恐ろしかったに違いない。
 
 何事もなくて安堵した。

「生誕祭が済んだら、再度教会に出向きましょう」
「そうね……」
 
 ソニアは同意した後、クリスの持っている瓶に注目する。
 
 大きなクリスタルを削り、美しく細工を施した蓋付きの瓶。中に液体が入っており、光に反射してプラズムを作っていた。

「クリス様、これは?」
 
 ああ、とクリスはソニアに手渡す。

「化粧水にした聖水だそうです」
 
 そう言うと、クリスはシスターに視線をうつす。
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