呪われ姫と強運の髭騎士
「ソニア様、軽くお食事をお取りになりますか?」
「そうね……お願い」
 
 尋ねてきた侍女に視線を向けると、キャイキャイと姦しかった他の侍女達が既に下がっていることに気付いた。

「他の侍女達は?」
「クリスフォード様の、お支度のご様子を見に行っております」
「あのお方にも、支度を手伝う者が付いているはずだけど……」
「はい、しかしながらクリスフォード様は今夜、ソニア様のエスコート役でございますから、ソニア様との衣装の組み合わせがございます。あまりにちぐはぐだと、お二方とも周囲から失笑を買いますので……」
「――えっ?」
 
 思わず声を出してしまう。
 
 ――エスコート役?
 
 そこは婚約者とか言わないだろうか?
 
 今、ソニアの前にいる侍女は王宮の者で、自分が連れてきた侍女ではない。

(あまりに歳の差があって、そう見えないのかしら?)

 というものの、ソニアも「婚約者です」と自分の口から言うのも照れてしまう。

(いずれ知れることだから良いかしら)

 そう思い、訂正してもらうことは止めておく。
 
 侍女が運んできてくれたチーズとハムのサンドイッチにパクつきながら、クリスが迎えに来るのを、のんびり構えて待った。
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