呪われ姫と強運の髭騎士
 またじわりと視界が霞む。

「パメラ!」
と、ソニアは抱き着き泣き出した。

「どうしてここに? 私、最近、修道院に行ったのよ? そうしたら、実家から迎えに来たって聞いて……!」
「叔父が私を社交界デビューさせて、手っ取り早く結婚相手を見つけさせるつもりなのよ」
 
 パメラは口を尖らせて、ドレスの裾を掴む。

「今夜、貴女が来るかも知れないって思って私、探していたのよ」
「私もよ、パメラ」
「貴女がクリス様と一緒にいたところを見て、それから見失ってしまったから、社交界デビューのご令嬢紹介の時間まで待っていたの。でも来ないんですもの、どうしたんだろうって聞き回っちゃったわ」
「――あ! そうだったわ! 紹介!」
 
 毎年の聖誕祭では、今年社交界にデビューする令嬢達を一人一人紹介していく。
 
 時間が来たら、並んで待機していなくてはならなかったのに。

「やだ……! さぼっちゃったわ!」
「生誕祭の三日間は、毎晩行うから平気よ」
「もうパメラは紹介が済んだの?」
「叔父がピッタリくっついていたから。紹介が済んだらこうやって放置よ」
 
 呆れて肩を竦めたパメラが、自分の知っている彼女でソニアは内心、ホッとした。
 
 それだけ、今のパメラはいつものイメージとかけ離れている。

「――それより、どうしたの? 貴女の部屋を探してこうやって待っていれば、泣きながら歩いてくるし……。 いつも側にいるクリス様は、どうしていらっしゃらないの?」

「……パメラ!」
 
 パメラに問われて泣いていた理由を思い出したソニアは、再び彼女に抱きついて泣き出した。
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