呪われ姫と強運の髭騎士
◇◇◇◇
 
 パメラに自分にあてがわれた部屋に入ってもらい、一通り話を聞いてもらった。
 
 いつの間にか侍女が控えていることに気付いた。

 おそらく、クリスが手配したのだろう。
 
 こちらが感心するほどきめ細やかな心遣いをするのに、今回は本人は追いかけてきてはくれなかった。

(こういう時ほど、追いかけて来てくれるものじゃないの?)

 
 改めて思い知らされたこと。

「クリス様にとって、私は『王の命令』で仕方なく決めた結婚相手なんだわ……」
 
 その事実にソニアの視界がまた滲み、揺れた。

「だから、いつまでも私のことを『姫君』と呼んで名前で呼んでくれないのよ」
 
 モヤモヤと頭の中で漂っていたけど、明白にしてこなかった疑問。
 
 怪奇現象騒ぎで忙殺されていたから、不安をこれ以上増やさないでいよう――そう、心が薄いカーテンを掛けていたのかもしれない。
 
 不可解な現象が落ち着いている今、改めて『結婚』に向き合って掛けていたカーテンを開けた。
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