呪われ姫と強運の髭騎士
「……人に求婚するの初めてなんだ。それでその、女性が喜んでくれるような言葉がなかなか思い付かないけど、本気だよ」
「……でも、何故、ずっと会わないでいた私に……?」
 
 ようやく出たソニアの言葉は、何とも覚束無いものだった。
 
 仕方ない。

 ソニアもプロポーズを受けたのは初めてなのだから。

「言ったろう? 君の見舞いに行って久し振りに再会して……。君を見て運命を感じたんだ。『君を守りたい』と思った」
「セヴラン様……。でも、私にはクリス様というパトリス王が決めた婚約者が……」
「――大丈夫!」
 
 ギュッと両手を握りしめ、顔を近付いてきたセヴランにソニアは戸惑う。

「僕と一緒に父上――いや、パトリス王の元に出向こう! そして二人の想いを話して婚約を無効にしてもらうんだ! ――今から早速行こう!」
 
 善は急げとセヴランは、ソニアをグイグイと会場内に引っ張っていこうとする。

「ちょ、ちょっと待って……お待ちください! セヴラン様!」
 
 どうにか彼を止めたソニアは軽い動悸が起こるなか、セヴランに言った。

「あまりに突然のことで私……まだ心の整理が……」
「こういうのは、勢いで行った方が良いんだ。……それとも、僕が結婚相手では……嫌?」
「……嫌……ではありません」
 
 ソニアがポッと頬を染める。「当然だよね」というセヴランの自信溢れた呟きが気になったが。

「……クリス様には、しばらくとてもお世話になったんです。彼の励ましがどんなに心強かったことも……。私、きちんとクリス様にお話をしてから王に申し上げたい……」
「――ということは、僕の求婚を受けてくれると言うことだね?」
 
 ソニアは恥じらいながらも頷く。

「今夜はクリス様は所用があって、舞踏会は欠席をしておりますから……明日。最終日に話してみます。――王への報告はそれからにしたいので……」
「分かったよ、ソニア」
 
 セヴランが思いっきり甘い笑顔をソニアに見せる。
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