呪われ姫と強運の髭騎士
夕暮れの黄昏時の、秘めやかな雰囲気が漂う庭を奥へ進んでいく。
転ばないように足下に気を付けながら、目的の東谷が見えてくると、すでに先客いる。
薄暗くてよく見えないが、男女のカップルらしい。
(……でも)
ソニアは首を傾げる。
と言うのも、あの東谷があるこの庭は王妃が住まう後宮だ。
いくら王宮に出入りが許されている者でも、許可なくしては入れない場所。
(まあ、私も許可無く入っちゃったけど……)
いつまでもいるわけにはいかないわよね、と諦めてその場を去ろうとしたソニアの耳に、よく知る者の声が入り、その場で立ち尽くしてしまった。
「――だから、君との付き合いのためなんだ。でなければ、どうしてあんな青臭い姫に求婚を? 僕の好みを知っているじゃないか……そう、君のような、大人の魅力に溢れた女性ではないと僕は駄目なんだ」
――セヴラン様?
「またそんな事を言って、誤魔化そうとするのね」
拗ねた口調の女性の声が返ってきた。
女性の口調は拗ねながらもどこか甘えが含んでいて、その場だけのものだとソニアにも分かる。
「彼女はクレア家の女主人なんだよ」
「――えっ? では『呪われた家系』のお方ではないの! そんなお方に近付いてセヴラン様は平気なの?」
女は甘えて寄り添っていたセヴランの肩から顔を上げただけでなく、身体から離れて距離をとる。
そんな女にセヴランは軽やかに笑う。
ソニアの方からは背中しか見えないが、きっとあの気品ある優しい笑みを浮かべ、女を見つめているのだろう。
「僕を見て? 呪いに巻き込まれたように見える?」
女はセヴランの問いに、ゆるゆると首を振る。
転ばないように足下に気を付けながら、目的の東谷が見えてくると、すでに先客いる。
薄暗くてよく見えないが、男女のカップルらしい。
(……でも)
ソニアは首を傾げる。
と言うのも、あの東谷があるこの庭は王妃が住まう後宮だ。
いくら王宮に出入りが許されている者でも、許可なくしては入れない場所。
(まあ、私も許可無く入っちゃったけど……)
いつまでもいるわけにはいかないわよね、と諦めてその場を去ろうとしたソニアの耳に、よく知る者の声が入り、その場で立ち尽くしてしまった。
「――だから、君との付き合いのためなんだ。でなければ、どうしてあんな青臭い姫に求婚を? 僕の好みを知っているじゃないか……そう、君のような、大人の魅力に溢れた女性ではないと僕は駄目なんだ」
――セヴラン様?
「またそんな事を言って、誤魔化そうとするのね」
拗ねた口調の女性の声が返ってきた。
女性の口調は拗ねながらもどこか甘えが含んでいて、その場だけのものだとソニアにも分かる。
「彼女はクレア家の女主人なんだよ」
「――えっ? では『呪われた家系』のお方ではないの! そんなお方に近付いてセヴラン様は平気なの?」
女は甘えて寄り添っていたセヴランの肩から顔を上げただけでなく、身体から離れて距離をとる。
そんな女にセヴランは軽やかに笑う。
ソニアの方からは背中しか見えないが、きっとあの気品ある優しい笑みを浮かべ、女を見つめているのだろう。
「僕を見て? 呪いに巻き込まれたように見える?」
女はセヴランの問いに、ゆるゆると首を振る。