呪われ姫と強運の髭騎士
 皮切りに、次々にクレア家の親戚が病に倒れたことから始まった。
 
 ――いや、最初はこれが『呪い』の始まりだと気付かなかったのだ。
 
 毒麦を精製した粉で作ったパンを食したのが原因だったから、不幸が続いたと皆が思った。
 
 それからまもなく、主城であるクレア城で怪奇現象が起き出した。
 
 最初の犠牲者はウィリアムの妻のイザベラ。

 次にウィリアムの弟にその家族。
 
 心霊現象や呪いなど撥ね飛ばす勢いでいたウィリアムが、憔悴した様子で私の父に相談しに来た日のことを今も覚えている。

『このままでは、我が家は途絶えるだろう――あやつによって』
『あやつ?  それは誰の事だ?』
『司祭だ……あやつは死して地に落ちた』

「亡くなった司祭が……『呪い』を……?」
 
 そんな、とソニアの訴える眼差しにパトリスは
「神に仕える身でも、人として欲は生きている限りあるものだ。神職につくものはあらゆる欲を無くす努力をするだけ。――だが、司祭は金欲を抑えることができなかったのだろう」
そう言った。

 
 原因が分かり、息子夫婦にまで危害が回る前に――と、当時の教皇をクレア城にお呼びし、降霊術で司祭を呼び出した。
 
 没収した土地は、中央教会に返還することを条件に『呪い』を解いてもらうつもりでいた。

 

 ――だが亡くなった司祭の要求は更に欲深いものとなっていたのだ。
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