呪われ姫と強運の髭騎士
「私……、パメラに嫌われていたのね……」
 
 ソニアの表情が寂しさに沈む。

「なんて鈍感なのかしら、私。パメラの辛さや悲しみに気付いてあげられなかったばかりか、彼女を傷付けていたなんて……私だけだったのね、親友だと思っていたのは……」
 
 あの穏やかな微笑みの裏で、そんな憎しみを抱えていたなんて。

「私は……知らずに、色んな人を傷付けているかもしれない……」
 
 やるせなさに縮んでいくソニアの肩に、クリスの手が置かれた。
 
 クリスを見ると、彼の表情は真剣だ。

「パメラ様をお助けするのは、躊躇われますか?」
「いいえ! パメラは違う意図で私と親しくしていたかもしれません。でも! 私は彼女がいてくれたから、今まで辛い出来事を沢山乗り越えてこれたんです! パメラが辛くてあのようになったとしたら、今度は私が彼女を助けたい!」
「貴女は実に前向きだ」
 
 ソニアの決意に、クリスは破顔する。

「……前向きなんかじゃありません。現に私、『死』の誘惑に負そうになりましたもの……」
 
 でも、クリス様が側に来た時――
 
 腕の力強さに――

「思い出したんです。パトリス王とクリス様のいった言葉を……『貴女を救いたいと思っている者達がいることを、忘れないでくれ』との言葉を。クリス様は私を救いたいと思っていることを、感じることが出来たから……」
 
 身体も心も気力も運も。

 神から授かると言われている『加護魔法』の恩恵だけじゃない。
 
 周囲に光を与える存在のようなクリス様。
 
 私も、クリス様のようになろう。
 
 強く逞しくなろう――そう決意したことも思い出した。
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