呪われ姫と強運の髭騎士
クレア城での怪奇現象
(1)
その日は、事前に宿泊を頼んでいたデュマ侯爵の別邸を借りた。
デュマ侯爵は昔クレア家と交流があった家だ。ソニアも勿論知っている。
馬車の屋根よりもずっと高い鉄柵の門をくぐると、短く刈られた芝の庭が見渡せる煉瓦の道を通る。
しばらく走ると屋根付きの白い玄関が見えた。
夕方で辺りは薄暗くなっていたが、春の装いを見せる庭園に咲く花は花弁を懸命に広げ、ソニアを歓迎しているように見えた。
先にクリスが降りてソニアに手を差しのべる。
ソニアは勇気を振り絞り、彼に手を預けた。
――指が触れた瞬間に「それ」は起きた。
ビリッ! と爪先に衝撃が走る。
「キャッ!」
小さな雷が落ちたような感覚に、ソニアは悲鳴をあげて手を引っ込めた。
クリスもピリッとした衝撃に驚いて、自分の手とソニアを交互に見比べる。
拳を作り、不安げに自分を見るソニアに気付き、クリスは安心させるように微笑む。
「どうやら季節外れの静電気が起きたようですな。これは失礼なことを。手を洗ってきます、アヴァン!」
クリスは馬車の後ろに控えていた従者を呼ぶ。
はい、と歯切れよい返事が聞こえ、小綺麗な格好をした少年が姿を現した。
「姫君を頼む。私の手は今、静電気を起こすようだ」
分かりましたと素直な返事をし、ソニアより幼いながらも丁寧な引導をして、馬車から彼女を下ろした。
デュマ侯爵は昔クレア家と交流があった家だ。ソニアも勿論知っている。
馬車の屋根よりもずっと高い鉄柵の門をくぐると、短く刈られた芝の庭が見渡せる煉瓦の道を通る。
しばらく走ると屋根付きの白い玄関が見えた。
夕方で辺りは薄暗くなっていたが、春の装いを見せる庭園に咲く花は花弁を懸命に広げ、ソニアを歓迎しているように見えた。
先にクリスが降りてソニアに手を差しのべる。
ソニアは勇気を振り絞り、彼に手を預けた。
――指が触れた瞬間に「それ」は起きた。
ビリッ! と爪先に衝撃が走る。
「キャッ!」
小さな雷が落ちたような感覚に、ソニアは悲鳴をあげて手を引っ込めた。
クリスもピリッとした衝撃に驚いて、自分の手とソニアを交互に見比べる。
拳を作り、不安げに自分を見るソニアに気付き、クリスは安心させるように微笑む。
「どうやら季節外れの静電気が起きたようですな。これは失礼なことを。手を洗ってきます、アヴァン!」
クリスは馬車の後ろに控えていた従者を呼ぶ。
はい、と歯切れよい返事が聞こえ、小綺麗な格好をした少年が姿を現した。
「姫君を頼む。私の手は今、静電気を起こすようだ」
分かりましたと素直な返事をし、ソニアより幼いながらも丁寧な引導をして、馬車から彼女を下ろした。