呪われ姫と強運の髭騎士
 三人は惜しむようにソニアから離れた。

「……どうかご無事で」
「お帰りをお待ちしております」
 
 執事頭と侍女頭が代わる代わる告げる。
 
 最後に城代のマチューが、クリスの手を握りしめ
「ソニア様を宜しくお願いします」
と涙ぐみながら彼に託す。

「――必ずや呪いを断ち切ってみせましょう!」
 
 クリスは力強く答えた。

「行きましょう、クリス様!」
「はい!」
 
 クリスはそう返事をした後、そっとマチューに耳打ちをした。

「万が一の時には、ソニア様だけでも救出出来るように、何人か扉の外に控えを」
 
 クリスの言葉にマチューは至極真剣に頷いた。
 
 それだけ、クリスの言葉も表情も鋭いものだったのだ。

 
 ――彼はソニア様のために刺し違える覚悟でいる。

 
 マチューはクリスの後ろ姿を見送りながらそう思い

 
 ――彼らの勝利の為に祈った。
< 223 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop