呪われ姫と強運の髭騎士
「さあさ、ここで立ち話は何ですから中に入りましょう――私もソニアの武勇伝を聞きたいわ」

 とシスターに促され、修道院の中へ入っていった。

 
 最後に会った時、シスターに対してあんなに猜疑心に満ちていたのに、今は彼方に飛んでいったように穏やかな気持ちで接することができる。
 
 長い煩いが、ようやく解消された――そんな清々しさがある。
 
 まるで、悪魔が全てを持ち去ってくれたように。
 
 呪いが解かれたと聞いて、真っ先に駆け付けてくれた一人であったシスター。
 
 ポロポロと流す涙も拭いもせず「良かった」と自分の無事を喜んでくれた。
 
 彼女の情を疑っていたなんて。

(私にも付け入られる隙が沢山あった)
 
 ソニアは、相変わらず慈愛溢れた眼差しを向けるシスターに微笑みながら、彼女の煎れたお茶をたしなんだ。
< 245 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop