呪われ姫と強運の髭騎士
「――それで、悪魔バフォメットの接触は無いの?」

 シスターが心配そうにソニアに尋ねてきた。

「はい。正体もばれてダメージも受けたから、あの悪魔からは接触はないだろうと。悪魔は警戒心がかなり強いから、とクリス様や教皇様が仰っておりました」
「……長く執着してとりついていたのはファーンズ司祭、ということなのかしらね。やはり『人』だからこその執念なのでしょう」
 
 シスターが残念そうに大息をついた。

 同じく神に仕える身でありながら欲に落ちていき、最後には悪魔と地に堕ちた神職者のことを考えると、やりきれないようだ。
 
 あの一太刀の後、切り裂くような悲鳴の中、消えていったのはファーンズの顔だった。
 
 バフォメットは察知し素早く逃げ去ったのだろう。

 
 シスターは胸の所で十字を切る。

「地に堕ちたとはいえ、元はわたくしの家族。早く罪に気付いて贖罪を送れるように、祈らずにいられません……」
 
 シスターはそう締め括った。
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