呪われ姫と強運の髭騎士
 夫人はフラフラと力なく座ると「ごめんなさい」と呟く。

「夫人、もしやご気分が優れませんか? 早くお休みになった方が……」
 
 驚いて微動だにしなくなってしまったソニアに代わって、クリスが真っ青になってうつ向く夫人に優しく促した。

「……申し訳ありません。そのようなので……貴方、すいませんが部屋に戻ります」
 夫人は泣きそうな表情をしながら夫とソニアに一礼をし、食堂から引き上げていった。
 
 侯爵は不機嫌な様子で妻を見送ると、ソニアに頭を下げた。
「すまないね……ソニア。妻はここのところ情緒不安定で時々、あんな風に訳の分からないことで声を荒げるのだよ」

「……いえ、夫人の体調が優れない時に一晩お宿をお借りしてしまって、こちらこそ申し訳ありません……」
 
 ソニアは夫人が口に出した「呪い」のことが気になりつつ、侯爵がさりげなく話題を逸らそうとしている様子をみて、尋ねることが出来なかった。
 

 侯爵の漫談も頷いて聞くも、ちっとも頭に入ってこないでいた。
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