呪われ姫と強運の髭騎士
 そうして辿り着いた場所は――

「東谷……」
 
 王妃のお気に入りの場所で、王室しか出入りを許されない場所。

「ご心配なく。王妃に断りを入れております」
 
 クリスは飲み干したグラスを、東谷に設置されているテーブルに置く。

「――事前にほら、このように」

 と、クロスをかけた大きな籠を、どこからか出してきてソニアに見せた。
 
 クリスが自慢気に笑いながら籠からクロスを取ると、ソニアは歓声を上げる。
 
 籠の中にはシャンパンにチーズにクラッカー、スパイス入りのフルーツケーキが入っており、美しく薔薇が飾られていた。

「凄いわ! クリス様って魔法使いみたいです !」
「盛装した魔法使いでしょうかね?」
 
 さあ、お座りください、と大理石の椅子にクロスを引いてそこにソニアを座らせる。
 
 クリスがシャンパンを開けている間にソニアは、チーズやクラッカーを籠から出し、フルーツケーキを切り分けた。

「……なんかこうしていると、恋人同士か夫婦みたいですね」
「……えっ?」
 
 クリスのシャンパンを開ける手が止まった。
 
 視線が合い、ソニアは慌てて言い直した。

「――あっ! いえ、そ、そう!  兄妹?  兄妹でもあってますよね?」

 というのも、クリスが篝火の灯りでも分かるほどに赤面していたからだ。

「……まあ、そうですね。うん、まあ……」

 とクリスは、全く歯ぎりの悪い返答をした。
 

 シャンパンをグラスにあけると、クリスは一つを取る。

「取り敢えず、再会に乾杯をしましょう!」
 
 努めて明るい口調でソニアを促す。

「はい!」
 
 ソニアもグラスを取ると、軽くグラスを合わせた。


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