呪われ姫と強運の髭騎士
「今日中にクレア城に着くぞ!」
「――クレア城は今日中には無理です。馬車でも二日はかかります」
「徒歩だと、四日以上はかかりますね」
 
 アニエスとクレモンの言葉に、僕のやる気が萎んだ。

「今の調子で歩いていけば、中継地点の宿街にはたどり着けるわよ。頑張ってえ、セヴラン!」
クララに背中をはたかれた。
「いっ……!  痛いな!  お前、もっと女らしく嗜み持って接しろ!  王宮にいる女達はもっとなあ、楚々として上品で可愛らしい人ばかりだったぞ! 」
「私も王宮仕えよ。 ってか、王宮にいる女がみんな嗜み深くて、楚々として可愛らしい?  外面ばかり見てたのねえ」
 
 ははは、とクララが乾いた笑いを見せた隣で、アニエスが鼻で笑う。
 
 ――こ、こいつらの今の顔!

「お前らが今、どんな顔をしているのか鏡で見せてやりたいね。可愛い娘達に嫉妬して、酷い顔しているよ。年増の嫉妬は醜い! 実にね!」
 
 ぐうの音も出ないようにしてやりたい。
 
 先程からずっと人を扱き下ろして、王子だということを忘れて。
 
 王宮仕えで僕に従わなくてはならない立場を思い出させてやる。
 

 ――だが
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