呪われ姫と強運の髭騎士
◇◇◇◇
「ご夫人、動揺しすぎです。もっと落ち着いて接していただかないと、彼女の中に縮小された呪いが刺激を受けましょう」
「ごめんなさい……」
クリスの厳しい眼差しにブリジット夫人は、血の気のない顔をハンカチで覆いうつ向いた。
「姫君は真実を知りません。そんな状態で周囲が騒ぎ立て異端扱いしては、『奴』の思う壺です。『奴』は人の動揺や恐れ等が何よりの好物なのですから」
「ええ……。明日は、普通にソニアを見送るわ」
「お願いしますよ」
自分の妻とクリスとのやり取りを横で聞いていたデュマ侯爵が、ふと溜め息を吐いた。
やりきれない――と言うように。
「本当に、ソニアに呪いがかけられているのだろうか? 嘘だと思いたいものだ」
「でも、その話はずいぶん前から噂として有名でしたわ。……流石に本人達の前では話しませんでしたけど」
と夫人は重ねて口を開く。
「クレア公爵家のご嫡男が落馬で亡くなったのを皮切りに、数年で跡目を継ぐ順位順に病気や事故、戦で亡くなって……遂にはクレア公爵夫妻まで痛ましい事故でお亡くなりになって……これはもう噂では済まなくなってしまって……」
「夫人」
クリスは、再び血の気が引いていく夫人に話しかける。
「くれぐれもソニア様に悟られないように。姫君から呪いを解く方法が見つかるまで――頼みますよ。これは勅命、陛下の命令です」
パトリス陛下の――はい、と夫人はハンカチを握りしめ頷いた。
王の命令は絶対だ。
直々に王直属の騎士であり、国の最高軍事司令官であるクリスフォード・コルトーが出てきている機密。
それは、国の重大な問題に発展するかもしれないということを示したものであり
また「クレア家」という家門の重大さを示すものでもあった。
「クレア家の呪いも信じられないが、貴方も信じられない」
「何が、ですかな?」
「怖くないのかね? あの娘の身にかかっている呪いが?」
侯爵の疑問はもっともだ。
「騎士は姫をお守りし、あらゆる困難からお救いするのが昔からの常識ですから」
クリスはそう言うと、片目を瞑って余裕の笑顔を見せた。
「ご夫人、動揺しすぎです。もっと落ち着いて接していただかないと、彼女の中に縮小された呪いが刺激を受けましょう」
「ごめんなさい……」
クリスの厳しい眼差しにブリジット夫人は、血の気のない顔をハンカチで覆いうつ向いた。
「姫君は真実を知りません。そんな状態で周囲が騒ぎ立て異端扱いしては、『奴』の思う壺です。『奴』は人の動揺や恐れ等が何よりの好物なのですから」
「ええ……。明日は、普通にソニアを見送るわ」
「お願いしますよ」
自分の妻とクリスとのやり取りを横で聞いていたデュマ侯爵が、ふと溜め息を吐いた。
やりきれない――と言うように。
「本当に、ソニアに呪いがかけられているのだろうか? 嘘だと思いたいものだ」
「でも、その話はずいぶん前から噂として有名でしたわ。……流石に本人達の前では話しませんでしたけど」
と夫人は重ねて口を開く。
「クレア公爵家のご嫡男が落馬で亡くなったのを皮切りに、数年で跡目を継ぐ順位順に病気や事故、戦で亡くなって……遂にはクレア公爵夫妻まで痛ましい事故でお亡くなりになって……これはもう噂では済まなくなってしまって……」
「夫人」
クリスは、再び血の気が引いていく夫人に話しかける。
「くれぐれもソニア様に悟られないように。姫君から呪いを解く方法が見つかるまで――頼みますよ。これは勅命、陛下の命令です」
パトリス陛下の――はい、と夫人はハンカチを握りしめ頷いた。
王の命令は絶対だ。
直々に王直属の騎士であり、国の最高軍事司令官であるクリスフォード・コルトーが出てきている機密。
それは、国の重大な問題に発展するかもしれないということを示したものであり
また「クレア家」という家門の重大さを示すものでもあった。
「クレア家の呪いも信じられないが、貴方も信じられない」
「何が、ですかな?」
「怖くないのかね? あの娘の身にかかっている呪いが?」
侯爵の疑問はもっともだ。
「騎士は姫をお守りし、あらゆる困難からお救いするのが昔からの常識ですから」
クリスはそう言うと、片目を瞑って余裕の笑顔を見せた。