呪われ姫と強運の髭騎士
◇◇◇◇
「うーん……」
「如何しましたか? 王」
お忍び用の簡素な馬車に乗ってから、しきりに唸るパトリスに、お供に付いてきた従臣は不思議そうに尋ねた。
「ソニア様がもしや、結婚相手をお気に召さなかったとか?」
「いや、大喜びだった……ただ……」
「ただ?」
「相手を間違えているかもしれん」
「……きちんとお話なさったんですよね?」
「『君のよく知る人物』で『セヴランの』と話した途端にもう大喜びで……その後、確認の意味でもう一度言ったが……上の空っぽいな……とねえ」
「あー、それもう絶対『結婚の相手はセヴラン王子』だと思っておりますね」
従臣は間の抜けた声を出して、パトリスと一緒に項垂れた。
「喜んでいたということは、ソニア様はセヴラン様をお慕いしていたってことですよね?」
「まあ、きっとそうなんだろうねえ。もともと彼女は七つで修道院に入っているから、男性というのはセヴランと、セヴランの周囲にいた大人しか知らないし、歳の近くてよく一緒に遊んでいたのはセヴランだし」
「そのまま純粋に成長しているわけですね、ソニア様は……清らかだなあ……セヴラン様と違って」
従臣は自分の失言に気付かずにいた。パトリスは一瞬ムッとしたが、日頃の息子の行いを見るに限りもっともなので文句も言えない。
従臣は名案! とでも言うように顔を綻ばせてパトリスに話す。
「一層のことセヴラン様で良いじゃありませんか、ソニア様のご結婚相手は。ソニア様の清らかさに心打たれて一筋になるかも知れませんし」
「そういかなかったら、ソニアが不幸になる。自分の息子の女癖の悪さにソニアを巻き込むわけにはいかんよ」
そうですねえ、と否定しない従臣にまたムッとしながらもパトリスは言葉を続けた。
「うーん……」
「如何しましたか? 王」
お忍び用の簡素な馬車に乗ってから、しきりに唸るパトリスに、お供に付いてきた従臣は不思議そうに尋ねた。
「ソニア様がもしや、結婚相手をお気に召さなかったとか?」
「いや、大喜びだった……ただ……」
「ただ?」
「相手を間違えているかもしれん」
「……きちんとお話なさったんですよね?」
「『君のよく知る人物』で『セヴランの』と話した途端にもう大喜びで……その後、確認の意味でもう一度言ったが……上の空っぽいな……とねえ」
「あー、それもう絶対『結婚の相手はセヴラン王子』だと思っておりますね」
従臣は間の抜けた声を出して、パトリスと一緒に項垂れた。
「喜んでいたということは、ソニア様はセヴラン様をお慕いしていたってことですよね?」
「まあ、きっとそうなんだろうねえ。もともと彼女は七つで修道院に入っているから、男性というのはセヴランと、セヴランの周囲にいた大人しか知らないし、歳の近くてよく一緒に遊んでいたのはセヴランだし」
「そのまま純粋に成長しているわけですね、ソニア様は……清らかだなあ……セヴラン様と違って」
従臣は自分の失言に気付かずにいた。パトリスは一瞬ムッとしたが、日頃の息子の行いを見るに限りもっともなので文句も言えない。
従臣は名案! とでも言うように顔を綻ばせてパトリスに話す。
「一層のことセヴラン様で良いじゃありませんか、ソニア様のご結婚相手は。ソニア様の清らかさに心打たれて一筋になるかも知れませんし」
「そういかなかったら、ソニアが不幸になる。自分の息子の女癖の悪さにソニアを巻き込むわけにはいかんよ」
そうですねえ、と否定しない従臣にまたムッとしながらもパトリスは言葉を続けた。