呪われ姫と強運の髭騎士
「こんなに新鮮ならそのまま食べるか、タルトにでもして頂きましょうか?」
 
 侍女頭の助け船に、ソニアは「そうね」と籠を渡した。
 
 ――変よね
 
 ソニアは食事を取っていないクリスを食堂に案内しながら、チラチラと彼に視線をやる。
 
 今日は、彼が気持ち悪いとか怖いとか全く感じない。
 
 それどころか、セヴラン様を想う時のように胸がドキドキと鼓動を打つ。

(さっき指にパクつくなんて、はしたないことをしたせいかしら?)
 
 本当、いい加減淑女らしくしないと。結婚するんだし。
 
 ――結婚
 
 それを考えると途端、気持ちが沈む。
 
 自分は彼を生涯の伴侶として見ていけるのだろうか?
 
 尊敬は出来る――だけど、いずれ後継者を残すために子を作らなくてはならない。

(彼と出来るのかしら?)
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