呪われ姫と強運の髭騎士
(どこまでも優しいお方)
 
 相手が不快な思いをしないように、それどころか楽しく盛り上げようとしてくれる。
 
 余裕のある大人でないと『結婚式を延期しよう』なんて言ってこないだろう。
 
 自分の対価は理解している。
 
 土地と財力を持つ身寄りの無い娘が、周囲の男たちにとってどれだけ魅力なのか。
 
 そんな娘と縁付けすると決まったら、気が変わらないうちに夫婦になろうとせっつくはずだろう。
 
 だけどクリスは今、自分と城の中で起きていることに頭を悩ませて気持ちが沈んでいる相手を優先に考えてくれる。
 
 彼の優しさに心が揺れるのに――

(どうしても、顔についている髭に悪寒が走るのよね……)

「クリス様、お心遣いありがとうございます。あの、私、クリス様のこと決して嫌いではありません。それだけは分かっていて下さい」

「姫君――」
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