呪われ姫と強運の髭騎士
真っ黒なのだ――まるで焼けたように。


「いったいこれは……?」
 
 長持ちを確認する。
 
 煤になるほどに衣装が燃えているなら、長持ちにも焼けた跡があるはず。
 なのに衣装が入っていた長持ちを全て確認しても、そんな跡などどこにも残っていない。

「誰かが長持ちから出して燃やしてから再び入れたのでしょうか……?」
「違うわ……。長持ちの中で燃えたのよ。外に運んで燃やして中に入れたら、こんなに綺麗に衣装の形が残るわけ無いわ。入れるまでにバラバラになってしまう……」
 
 侍女頭の言葉にソニアは首を振る。
 
 じっと衣装の燃えかすを見つめるソニアの顔は、血の気が失せ、青白い。
 
 一心に変わり果てた衣装達を凝視し、身動きひとつしない。

「ソニア様」
 
 様子のおかしいソニアを侍女頭は、側にいた他の侍女達と抱えるように長持ちから離す。
 
 ソニアは長持ちから手が離れると、その場にストンと尻餅をついて動かなくなってしまった。

「クリスフォード様をお呼びして」
 
 侍女頭はソニアの意識を確認するように彼女の肩を擦りながら、そう他の侍女に頼む。
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