呪われ姫と強運の髭騎士
 阿鼻叫喚の中で、ソニアはクリスの名を呼びながら必死に追いかけていく。

「えい!」
 
 その掛け声と同時、長持ちの中から長くて大きい刃が貫かれた。
 
 仰天して立ち止まったソニアの前で、クリスが入っている長持ちも止まる。

「ハッッッッッ!」
 
 気合いの入ったクリスの声がくぐもって、長持ちの中から聞こえてくる。
 
 バキッ、バキバキ!
 
 厚い木材の割れる音を出しながら、クリスが剣を片手に長持ちから飛び出す。

「ハッハッッ! このくらいの事では、私の存在を消すことなど出来ぬぞ!」
 
 高笑いしながら誰にともなく公言したクリスに、そこにいた一同唖然としながら注目した。
 
 はた、と自分の剣で破壊した長持ちを一瞥したクリスは、後ろ頭を掻きながらソニアに謝る。

「あ……。姫君申し訳ない、長持ちを一つ壊してしまった」

「い、いえ……。それは構いませんけど……」
< 81 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop