呪われ姫と強運の髭騎士
 ギィ……と、錆びた音がして扉が開かれる。
 
 クリスは身体を半分だけ入れて、警戒した眼差しで中を確認する。
 
 それから観音扉の片面だけを開けると、抜いた閂で押さえた。

「今、言えることはカビ臭いというだけですかね」
「中に入っても……?」
「ちょっと待っていて下さい」
 
 クリス一人中へ入って、見て回る。

 ソニアはその様子を、不安な表情で見守っていた。

「大丈夫そうです。だけど足元に気を付けてください」

 戻ってきたクリスの手に引かれ、ソニアも中へ入っていく。
 
 中は城の一基分を使っているだけあって、広くて天井が高い。
 
 ステンドグラスが真正面を飾り、日に透けて明るい室内にしていた。様々なセレモニー会場としても使われることが多い礼拝堂だ。
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