呪われ姫と強運の髭騎士
 ――まずい!

 
 どんどん土地が狭まってきている。
 
 この先は確か――崖

「助けて! クリス様!」

「ソニア!」
 
 車内の中で自分の名を呼び助けを乞うソニアの声に、クリスは腕に更に力をこめて、振り落とされそうになる身体を必死に車内に入れた。

「クリス様……!」
 
 びしょ濡れになりながらも肩を揺らし、息切れをしながらも笑いかけてくるクリスに、ソニアは安心して涙でグシャグシャの顔で彼に抱きつく。

「もう大丈夫!さあ、しっかり私に掴まって!」
「はい!」

 



 間一髪だった。
 
 ソニアを抱き締め飛び降りてすぐ、馬の嘶きと共に崖に落ちていく馬車を二人見送った。





 ――どこからともなく


『ちくしょう! あと少しで根絶やしにできたのに!』



 と、地の底から叫ぶような低い声が聞こえた……。
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