たんぽぽの花束を君に
ーーー
それは丁度、華がいなくなる何日か前。
涼とケンカして、何日間も目の前にあるいつもの公園に行けなくて、
涼の顔を見るなり、
逃げるように走ってここに来た俺……
そんな俺を放っておけなくて、あいつは後ろから追って来てた。
それであいつ、こんなどうでもいい話しし出したんだ。
「蓮くんね、私、サクライってお名前でしょ」
「うん!…桜だ!」
「そうなの!だから、華ね、桜大好きなんだ」
「本当だ!サクライ ハナ。 桜の花だ!」
「うん!」
自分よりも大きい
淡い桜の色と、華の笑顔が同化したように見えた。
ーー
この時だったかもしれない。
俺、華をちゃんと女の子として見た瞬間…だったのかも…
「あの、すいません」
その言葉で昔の記憶から現実に引き戻される。
「…はい」
その瞬間、
時が止まったかと思った。