たんぽぽの花束を君に


「あのー…この桜まつりはいつからですか?」

「あ、あ、○月の○日…」


まさか…まさか…

ふわっと石けんの香りと共に
忘れかけてた何かを連れて来ていた。


「…そうですか。」
ほっと安心するように笑う顔。

この顔見覚えがある。



まさか、まさか、、、

ありえねーだろ。


「…てか、なんで俺に聞くんですか?」
俺は不確かな物を確実な物にしたくて
驚きながらも問いかける。

「…え、だって…」
とこの人は俺のシャツに着くピンセットで止まったリボンを指差して言う。


「あ、…あぁ」
しっかりと俺のシャツに
【桜まつり会】
って書いてある。

「…ぷ」
口元に手をかざし笑うこの人。

「…じゃぁ、ありがとうございました。頑張ってください」
「ちょ、ちょ」
ちょっと待ってと言いたかったのにもかかわらず、噛み噛みな俺に嫌気がする。
確かめたくて
まだ確かめ終わってないのに、俺から離れていく小さな背中。

まだ…
まだなのに…

気づいた時には、その小さな背中に手が届く一歩手前まで走ってた。

待ってと手を差しのべた時、
俺のその
〝まさか〟
はこの人の囁くような独り言で確実なものに変わった。


「…昔とお祭りの日…かわらないな。」











また、時が…
止まった。













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