たんぽぽの花束を君に
ピピピ
花純の制服のポケットからスマホが鳴り出した。
表示された名前を見るなり、花純は笑みがこぼれだす。くるっと後ろを向いて通話ボタンを押した。
「もしもし、うんうん…」
もぅ誰から電話か俺は分かる。
いや、隣にいる涼も分かってるはず。
「ねね、星夜がこれから会おうって」
涼と俺は顔を見合わせる。
「いや、俺はいいよ」
「俺もパス」
「え、でも星夜に1人で会えないよ…緊張しちゃう」
「…緊張しちゃう♡じゃねーよ。」
「は?」
「緊張が似合わねーっての。」
「まぁまぁ、花純、大丈夫だろ。鈴がいるよ。」
一瞬、花純の顔が曇った。
「……そうだよね、うん、行ってくる!」
ローファーが
パァン
と下に落ちる。
それをスッと足に入れ込むと
「全部受け止めてあげたいって決めたのに…私…一瞬イヤな顔しちゃった。」
「…仕方ねーよ。俺らにはまだ背負える物の量が少ないんだから、ゆっくりでいいんだよ。」
「花純はそんな奴じゃないのは俺たちが知ってる。」
「…うん、ありがとう。2人とも」
花純は勢い良く、走り出して行った。
もう2人の中の1人、野原 星夜の所に。