反逆の騎士長様


その時、今まで黙っていたラントがクロウに尋ねた。



「それが…ジャナルだったのか?」



クロウは、無言で頷いた。


クロウは、ジャナル大臣との過去の会話を口にする。



「奴は、俺に言った。“姫を一生守れる力が欲しくはないか”、と。どんな戦にも毒にも勝てる“不死の体”。

…俺は、奴の甘い言葉に乗った。全てをリディナに捨てさせる代わりに、俺は付いてきてくれるリディナに応えてやれる力が欲しかった。」



不死の体になる代わりに…

ジャナルはクロウに自分の操り人形になることを条件にしたんだ。



「呪いを受け、ジャナルと別れた後…、リディナは俺の前に来た。

情報屋の流した情報が、全くの嘘だったとの知らせを持って。」



え…?


私とラントは、驚いて目を見開いた。


クロウは、静かに続ける。



「情報屋は、王によって処刑された。…俺は戦がなくなったところで戻るつもりはなかった。リディナを連れて国を出ようとしたんだ。

だが…夜が明けた頃、リディナが病に倒れたんだ。」



…!



ぞくり、と体が震えた。



まさか…ロッド様の言っていた“伝染病”…?



クロウは、顔を歪めて続ける。



「俺は国を出ることを辞め、リディナを連れて城に戻った。すぐに城の医者に診せたが、彼女の病が治ることはなかった。

…それどころか、城中の者が全員病に倒れたんだ。…信じられなかった。」



私とラントは無言でクロウの話を聞き続ける。



「呪いにかけられた俺だけが、伝染病にかからなかった。それはひどく不気味で、恐ろしかった。…周りの奴らは次々と死んでいった。

…そんな中、伝染病を国に持ち込んだのはあの情報屋で、そいつは藍色の瞳の男に雇われた者だったと知った。」



「「!」」



はっ!とした。


藍色の瞳の男…って、まさか、ジャナル大臣…?


全ては、仕組まれた罠だったってこと?



「ジャナルは、荒れ地と隣接しているこの城を乗っ取ることで一帯をノクトラームの領地にして、自分の計画通りに事を運ぼうとしたんだ。

…程のいい下僕を手に入れてな。」



…!



ノクトラームの王達に復讐するために、この城の人々を殺したってこと…?


荒れ地を奪いたいがために?



「…ありえねぇ………。

どんだけゲスなんだ、あの野郎……!」



ラントが苛立たしげに呟いた。



…信じられない。



嘘の情報を流して国を混乱に陥れ、クロウのリディナ姫への想いを利用した…。


城のみんなも、リディナ姫も……

今はいない。



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