反逆の騎士長様
窓を揺らしていた風が止んだ。
空は相変わらずの曇天で、城の周りは昼か夜か分からないほど太陽の光が届かない。
私は、クロウの首元に光るネックレスを見つめて口を開いた。
「クロウは、ずっとジャナル大臣に縛られ続けているの…?」
すると、クロウはぼそり、と答える。
「この“首輪”がある限り、俺はジャナルに逆らえない。自分では外せないんだ。
ジャナルの魔力が消えると同時に、俺の命は消える。…それまで、俺は一生、奴の下僕だ。」
クロウは、ふっ、と顔を上げて部屋を見つめながら続けた。
「この城も、ジャナルの魔力で保っているようなものなんだ。
俺が死ぬと同時に、この城も崩れる。」
…!
私は、クロウの腰掛けるソファを撫でた。
「…城の中が綺麗だったのは、クロウがここを大切に守ってきたからだったのね。」
クロウは、私の言葉に小さく目を見開くと、懐かしむように目を細めながら呟いた。
「あぁ。
…過去の城の様子を知っている者は、もう俺しかいないからな。城を寂れさせるわけにはいかない。」
その声はどこか悲しげで、切ない。
時計の針の音だけが部屋に響く。
私は、沈黙の中クロウを見つめた。
そして、ふと気になったことを彼に向かって尋ねる。
「その髪の色は、どうしたの…?」
「髪?」
「写真ではロッド様と同じ漆黒の髪だったでしょう?
銀髪になったのは、ジャナル大臣に呪いをかけられたからなの?」
すると、ラントも机の上にある写真へ目を向けて、微かに眉を寄せた。
クロウは、薔薇色の瞳を細めながら答える。
「…あんたの言う通りだ。城の人々がいなくなった後、俺はジャナルの駒になった。再び魔法をかけられ、命を握られた。一度死んだも同然だ。
その時には、もう今の俺になっていて…首には魔法陣のネックレスがあった。」