反逆の騎士長様
…!
どくん、と胸が鳴った。
心が、ざわざわと騒ぎ出す。
クロウの言葉は重く、核心をついていた。
自分に言われた言葉のようにも感じる。
まるで、一線を越えてしまった経験者が、イバラの道へと踏みはずそうとしている俺に忠告しているようだ。
「…ロッド様は、貴方みたいに強引にはしないわ。」
「されたらどうする。また泣くつもりか?」
…!
壁を隔てて繰り広げられる会話に、さっきとは違う緊張が俺を襲った。
アルトラも黙ったまま聞き耳を立てている。
…姫さんは、何て答えるつもりなんだ…?
部屋には、沈黙が流れていた。
しかし、小さく呟かれた姫さんの言葉を聞き取るには、その静寂はちょうど良かった。
「ロッド様になら、何をされたっていい。
それが、私の“契約”だから。」
!!
チャキ…!
思わず、剣の柄に触れていた手が微かに音を立てた。
一瞬、震えた指は心の動揺を隠せない。
…無自覚で言っているのか…?
契約だとはいえ、いくら何でも俺を信用しすぎだろう。
俺はもうすでに、片足をイバラに捕らわれているというのに。
不確かな感情が心の中を荒らし始めた時、アルトラが俺に小さく呟いた。
「…ロッド。」
「!」
アルトラは、こちらを見ないまま俺の名を呼んだ。
そして、静かに言葉を続ける。
「今の、どう思う…?」