反逆の騎士長様
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コンコンコン
午後八時。
部屋のベッドに腰掛けていると、扉を叩く音がした。
「セーヌさん、準備はいい?」
「あ、うん!今行く。」
約束通り部屋に迎えに来てくれたアルに答え、私は部屋を出た。
廊下に立つアルの隣に並ぶと、アルはにっこり微笑んで歩き出す。
「ここの書庫は、二階の奥にあるみたいなんだ。
昼間にロッドと少し見たけど、すごく広くて驚いたよ。」
そうなんだ…!
私は、アルの話を聞きながら、胸を躍らせて廊下を進む。
二階へと続く階段が目の前に現れると、思わず、その装飾の細かさに感嘆の声が漏れた。
「…綺麗なお城ね…。
ここが“呪われた城”なんて言われているのが悲しいわ。」
「…そうだね。」
アルは私の言葉に、どこか遠くを見るような瞳で城を見つめながら言った。
…クロウの話を聞いた後だからかな。
あれだけ怖かった城が全く違って見える。
クロウがこの城を一人で掃除していたことを想像すると、なんだか悲しくなってくるような気がした。
階段を上り廊下を進むと、アルはある一つの扉の前で立ち止まった。
「さ、着いた。」
アルが扉のノブに手をかけると、ギィ…、と古びた軋む音が静かな城に響く。
そして、扉の向こうに広がっていたのは、ずらり、と並んだ本棚だった。
すごい…。
迷路のように立ち並ぶ本棚には、分厚い魔法書から、代々伝わるおとぎ話の本まで貯蔵されていた。
アルは下から上まで本棚を見ながらゆっくりと歩いていく。