反逆の騎士長様



ロッド様は、ふいっ、とバルコニーの外へと視線を向けた。


そして、こちらを見ずに口を開く。



「姫さんのお陰で楽になった。ありがとうな

夜風が冷たい。姫さんは、先に戻っていてくれ。」



「え…?ロッド様は戻らないんですか?」



「…俺は少し、頭を冷やしてから行く。」



…?



私は、こちらを見ようとしないロッド様の背中を見つめ、「分かりました…」と返事をした。


バルコニーを出て扉を閉めると、無意識に張っていた気が緩む。


ちらり、と扉越しにロッド様を見ると、彼はバルコニーの柵に腕を乗せて何かを考え込んでいるようだ。



…“頭を冷やす”って…どういうことですか?


ロッド様は、どうして私に“あんな質問”
を…?



口に出来ない質問を飲み込むように、私は小さく呼吸をした。



**



コツコツコツ…



一人で、城の廊下を進む。


一階へと続く階段を降りると、肖像画が並ぶ廊下が見えた。


その時、頭の中にアルの声がこだまする。



““女神の瞳に輝き戻りし時、光への道開かれん”という一節の通り、きっと城にある“女神像”が何かのヒントになってるんだ。”



…そういえば…あの先に“女神像”があったような…。



私は、引き寄せられるように廊下の奥へと進んでいく。


肖像画に見つめられているような感覚を体に感じながら足を進めた。



すると、女神像の前に、ある一つの人影が見えた。



「…ラント…?」



「ぎゃぁっ!!」



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